そうそれは、とても微かな。
ゆっくりと繰り返される寝息や。 自分よりも早い鼓動だとか。 わずかに触れたところから伝わる体温なんか。
見下ろせば子供の頭。正確には、銀糸の束。 自分の片足を枕に、静かに眠っている。 子供は軽く、足が痺れるということはないが、身動きが取れないことは問題だ。 何故よりにもよって足を選ぶのか。 差し迫って危険が無いのが唯一の救いだ。
聞こえるのは時々こぼれる寝息の端だけ。 誘われる様に、緩い眠気がやってくる。 子供に起きる気配は無い。 特にすることもできることもない。 差し迫る危険も無い。 わずかに諦めも混ざり、瞼を閉じる。 子供の頬が当たっている部分だけが、妙に心地よかった。
命はあたたかいものなのだと知った、ある日のこと。
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