『スパーダ。』 名を呼ばれて顔を上げると、あの人がいた。 『どうした。歩きながら寝ちまったのか?』 ……ううん。ちょっとぼんやりしちゃっただけ。 『そうか。…もう少し行くと泉がある。そこで少し休むか。』 いつもと、かわらない笑顔。それなのに、どこか違和感がきえない。 ………どうして? 『え? お前、疲れてんじゃねえ?』 ! あ、うん。あ…ありがとう。 口にしたつもりはなかったのに、声にでてたみたい。 『ほら、もうすぐだから。寝ぼけてこけるなよ?』 寝てないってば! 当り前の様に差し出された手を掴もうと、自分もごく自然に手をのばした。
のばされた手を掴むことなく、スパーダは目を覚ました。 目の前には夢の中で目指していた泉がある。 前にも1度、ここに来た事がある。夢の中のように、彼に連れられて。 夢の中の違和感は、彼がいたからだった。 もう差し伸べられる手はない。 どれだけ探しても、見つからなかった。。 別れを告げられた、あの時から。
夢の中で見た後ろ姿は、もう見えない。
|
|