気まぐれ不定期日記

...... 2006年04月07日 の日記 ......
■ 2人が別れる、少し前の話。   [ NO. 2006040701-1 ]
手を引かれた。
その行為自体はもう随分と慣れ親しんでしまったものだ。
ただ、込められた力がいつもよりも強くて。
自分の隣よりも、ほんの少しだけ後ろに立つ少年を見やる。
「どうした、スパーダ。」
少年は答えることなく、ただじっと見つめ返してくる。
縋るような、それでいて自分がここにいるのを確かめているような。そんな眼で。

胸の内を、見透かされたような気がした。


傍にいるのに。目の前にいるのに。
何故だかわからないけど、ひどく遠くまで離れてしまったような。
胸の奥が、ざわざわする。
広い背が、今にも消えてしまいそうに感じて、繋ぎ留めるように手を掴んだ。
「どうした、スパーダ。」
いつもより力が入っているのを、不思議に思ったのだろう。
見下ろしてくる紅い眼は、いつもと変わらない。
それが、今ここにベオウルフがいることを証明してくれている。
…目を離したら、消えてしまうんじゃないだろうか。

しばらくの間、その紅い色から、目を離せなかった。





散文お題:君の背中はまるで粉雪のように儚くて
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