手を引かれた。 その行為自体はもう随分と慣れ親しんでしまったものだ。 ただ、込められた力がいつもよりも強くて。 自分の隣よりも、ほんの少しだけ後ろに立つ少年を見やる。 「どうした、スパーダ。」 少年は答えることなく、ただじっと見つめ返してくる。 縋るような、それでいて自分がここにいるのを確かめているような。そんな眼で。
胸の内を、見透かされたような気がした。
傍にいるのに。目の前にいるのに。 何故だかわからないけど、ひどく遠くまで離れてしまったような。 胸の奥が、ざわざわする。 広い背が、今にも消えてしまいそうに感じて、繋ぎ留めるように手を掴んだ。 「どうした、スパーダ。」 いつもより力が入っているのを、不思議に思ったのだろう。 見下ろしてくる紅い眼は、いつもと変わらない。 それが、今ここにベオウルフがいることを証明してくれている。 …目を離したら、消えてしまうんじゃないだろうか。
しばらくの間、その紅い色から、目を離せなかった。
散文お題:君の背中はまるで粉雪のように儚くて 配布元 |
|